それは、静まり返った真夏の深夜に机に向かい、本の世界に没頭していた時のことでした。ふとした瞬間に首筋にわずかな違和感を覚え、小さなアリのような虫が這っているのに気づきました。私は深い考えもなく、それを指先で払い落としましたが、その一瞬の行動が後の二週間に及ぶ苦しみの始まりになるとは思いもしませんでした。やけど虫との遭遇から翌朝までの間、私の皮膚には何の変化もありませんでした。しかし、昼過ぎになって首筋が妙にムズムズし始め、鏡を見ると、まるで誰かに赤い筆でなぞられたような細長い腫れが浮き上がっていたのです。これが有名なやけど虫の症状なのかと、私は自分の無知を呪いました。夕方になる頃には、その赤い筋は熱を持ち始め、我慢できないほどの猛烈な痒みに襲われました。蚊に刺された時のような単調な痒みではなく、チリチリとした不快な刺激がずっと続くのです。二日目の朝、症状はさらに劇的な経過を辿りました。赤い腫れの上に、無数の小さな水膨れが線状にびっしりと並んでいました。それはまるで沸騰したお湯を浴びた後のような見た目で、ヒリヒリとした痛みが痒みに取って代わりました。私は慌てて皮膚科へ駆け込み、強力なステロイド軟膏を処方してもらいました。医師からは「絶対に触らないこと」と厳命されましたが、寝ている間に無意識に掻いてしまったのか、三日目には水膨れが破れてジュクジュクとした状態になり、その範囲が顎の下にまで広がってしまいました。この「キス病変」と呼ばれる飛び火現象は、やけど虫の毒がどれほどしつこく皮膚に残るかを物語っていました。一週間が経過し、患部がようやく茶色いかさぶたに覆われ始めたとき、私はようやく一息つくことができました。しかし、そこからがまた別の戦いでした。かさぶたが剥がれ始める段階での痒みは凄まじく、それを耐え抜くのに必死でした。最終的に、二週間が経つ頃にようやく新しい皮膚が見えてきましたが、そこにはくっきりと茶色い跡が残りました。この跡が目立たなくなるまでにその後三ヶ月以上を費やしましたが、一瞬の接触がこれほどまでに長く、そして深い傷を残すことに驚きを隠せませんでした。あの夜、もし虫を払うのではなく、優しく吹き飛ばしてさえいれば。この経験は、私に「知らない虫には絶対に触れない」という一生ものの教訓を刻み込みました。やけど虫による被害は、単なる皮膚炎ではなく、時間と忍耐を必要とする過酷な試練そのものだったのです。