念願のマイホームを手に入れて初めての春を迎えた五月の連休中の出来事でした。庭の手入れをしようと外に出た際ふと二階の軒下を見上げるとそこに見慣れない灰色の小さな塊が付着しているのに気づきました。大きさはピンポン玉よりも一回り小さいくらいでよく見ると一匹の大きな蜂がその表面を忙しそうに歩き回っていました。これが噂に聞く蜂の巣の作り始めなのだと直感した瞬間背筋に冷たいものが走りました。まだ家を建てて一年も経っていないのになぜうちが選ばれたのかというショックとこれから蜂が増えて家族が刺されたらどうしようという不安で胸がいっぱいになりました。私はすぐに家の中から家族を呼び寄せ窓を閉め切るように伝えました。インターネットで調べるとこの時期の巣は女王蜂が一匹で頑張っている段階であり早めに対処すれば素人でも駆除できる可能性があることを知りました。しかし一歩間違えれば危険なことには変わりありません。私はまず蜂の種類を特定しようと少し離れた場所から双眼鏡で観察しました。後ろ脚を長く垂らして飛ぶ姿からアシナガバチであると推測し近くのホームセンターへ走って蜂専用の強力な殺虫スプレーを購入してきました。決行は蜂の活動が鈍くなるという夜間を選びました。暗闇の中で懐中電灯に赤いセロハンを貼り蜂を刺激しないように足元だけを照らしながら慎重に目標に近づきました。心臓の鼓動が耳に響くほど緊張しましたが意を決して三メートルほど離れた場所からスプレーを一気に噴射しました。シュッという激しい音とともに白い薬剤が巣を包み込み一瞬だけ羽音が聞こえましたがすぐに静まり返りました。翌朝明るくなってから確認すると地面に一匹の蜂が落ちており巣の中は空っぽになっていました。私は長い棒を使って巣を軒下から剥がし跡地をアルコールできれいに拭き取りました。蜂の巣の作り始めに気づけたおかげで大きな騒ぎになる前に解決できましたがもしあと一ヶ月発見が遅れていたらと思うと今でもゾッとします。それ以来私は毎朝ゴミ出しのついでに軒下を一周チェックすることを欠かさないようになりました。自分の手で家を守り抜いたという安堵感とともに自然と共生する厳しさを学んだ忘れられない春の記憶です。