暦が三月を過ぎ、庭の木々に新芽が芽吹き始める頃、ひっそりと、しかし着実に始まっているのが蜂の営巣活動です。蜂駆除という言葉を聞くと、夏場の大きな巣を想像しがちですが、実はこの春先の「作り始め」の時期こそが、一年で最も安全かつ安価に対策を講じられるゴールデンタイムなのです。冬眠から目覚めたばかりの女王蜂は、たった一匹で新しい国を作るための場所を探しています。この時期の蜂の巣は、まだゴルフボール程度の大きさで、形も特徴的です。例えば、アシナガバチなら小さなシャワーヘッドのような形、スズメバチならトックリを逆さにしたような可愛らしい形をしています。この段階では、まだ働き蜂が羽化していないため、女王蜂一匹を追い払うか駆除するだけで、その後の巨大化を完全に阻止できるのです。春の庭掃除のついでに、ぜひ点検してほしいポイントが三つあります。一つ目は、軒下やベランダの天井の隅です。ここは蜂にとって雨風を凌げる最高の立地条件です。二つ目は、エアコンの室外機の裏や戸袋の隙間です。暗くて適度な温かみがある場所は、営巣のターゲットになりやすいです。三つ目は、生垣や庭木の内部です。外からは見えにくい枝の間に、ひっそりと巣が作られ始めていることがあります。もし、女王蜂が一匹で忙しそうに巣を作っているのを見つけたら、市販の蜂専用スプレーを用意しましょう。夜間、蜂が眠っている隙に風上から噴射すれば、素人の方でも安全に処理できる可能性が高いです。ただし、この時期でも油断は禁物です。女王蜂といえども刺されれば激痛が走ります。必ず厚手の服と帽子、手袋を着用し、作業前には逃げ道を確保しておきましょう。また、蜂に巣を作らせないための「予防散布」もこの時期が最も効果的です。蜂が嫌うミントの香りや木酢液、あるいは市販の忌避成分が含まれたスプレーを、過去に巣を作られた場所に吹きかけておくだけで、女王蜂は「ここは住みにくい」と判断して別の場所へ去っていきます。蜂駆除の極意は、戦う前に勝つこと、つまり「作らせない環境作り」にあります。春の穏やかな日差しの中で、ちょっとした注意を払うだけで、夏から秋にかけての不快なトラブルを未然に防ぎ、安心してガーデニングや洗濯物干しを楽しめる環境を守ることができるのです。