日本に生息する蜘蛛のほとんどは、人間に対して無害、あるいは毒性が非常に弱いものです。家にいる足長い蜘蛛、イエユウレイグモも、もちろん無害です。彼らは臆病な性格で、人を積極的に攻撃することはなく、その小さな顎は人の皮膚を貫くことさえできません。しかし、ごく一部ではありますが、咬まれると激しい痛みや、重篤な症状を引き起こす可能性のある「毒蜘蛛」も、日本国内に生息していることを、知識として知っておくことは重要です。特に注意が必要なのが、特定外来生物である「セアカゴケグモ」です。メスは体長1センチメートル程度で、全体的に黒く、腹部の背面に、砂時計のような形をした、鮮やかな赤い模様があるのが最大の特徴です。このメスだけが、神経毒を持っています。側溝の蓋の裏や、公園のベンチの下、植木鉢の裏といった、地面に近い、暗くて狭い場所に、不規則な形の網を張って生息しています。性格はおとなしいですが、網に触れたり、誤って掴んでしまったりすると、咬まれることがあります。咬まれると、激しい痛みが広がり、発熱や吐き気、筋肉の痙攣などを引き起こすことがあります。また、日本在来の蜘蛛の中で、最も強い毒を持つとされるのが「カバキコマチグモ」です。体長は1から1.5センチメートル程度で、淡い緑色や黄褐色の体をしています。ススキなどのイネ科の植物の葉を、ちまきのように巻いて巣を作るのが特徴です。夏から秋にかけて、草刈りなどの際に巣を壊してしまい、咬まれる被害が発生します。咬まれると、激しい痛みが数日間続き、腫れや発熱、頭痛などを伴うことがあります。これらの毒蜘蛛は、イエユウレイグモのように、積極的に家屋内に侵入してくることは稀です。しかし、屋外での作業中や、家の周りの清掃中に遭遇する可能性はゼロではありません。もし、見慣れない、派手な色合いの蜘蛛を見かけた場合は、絶対に素手で触ろうとせず、靴で踏み潰すか、殺虫剤で駆除し、その場を離れるようにしましょう。