ムカデに噛まれた瞬間に走る、焼けるような激しい痛みは、経験した者にしかわからないほどの苦痛です。この痛みは、ムカデの毒に含まれるヒスタミン様物質や酵素などの成分によって引き起こされ、痛みと共に患部が赤く腫れ上がります。万が一ムカデに噛まれてしまった場合、その後の症状を悪化させないために、迅速かつ適切な応急処置を行うことが極めて重要です。まず、噛まれたらすぐに傷口を流水でよく洗い流してください。そして、ここが最も重要なポイントですが、傷口を温めることが推奨されています。ムカデの毒の主成分である酵素は熱に弱い性質を持っているため、四十三度から四十六度程度の、少し熱いと感じるくらいのお湯で傷口を洗い流すか、シャワーを五分以上当て続けることで、毒の活性を失わせ、痛みを和らげる効果が期待できます。冷やした方が良いと思われがちですが、冷やすと逆に血行が悪くなり、痛みが長引くことがあるため注意が必要です。ただし、熱すぎるお湯で火傷をしないように、温度管理にはくれぐれも気をつけてください。傷口を温めて清潔にした後は、炎症を抑えるために、抗ヒスタミン成分やステロイド成分が含まれた軟膏を塗布します。ドラッグストアなどで市販されている、虫刺され用の薬で問題ありません。通常であれば、これらの処置によって痛みや腫れは数時間から数日以内に徐々に引いていきます。しかし、もし噛まれた箇所以外にも全身にじんましんが出たり、吐き気や頭痛、めまい、動悸、呼吸困難といった症状が現れた場合は、アナフィラキシーショックという重篤なアレルギー反応を起こしている可能性があります。これは非常に危険な状態で、命に関わることもあるため、少しでも異変を感じたら、ためらうことなく救急車を呼ぶか、速やかに皮膚科やアレルギー科などの医療機関を受診してください。